原発性肺癌
手術が必要と判断され、当科に紹介された肺癌の患者さんには、原則として1カ月以内に手術を行うようにしております。早期肺癌(臨床病期I、II期)に対しては通常、ロボット支援下手術もしくは完全鏡視下手術(1個~4個の小さい穴)といった低侵襲手術を行っております。
ロボット支援下手術に関しては、2020年1月より導入され、2021年までにすでに40人以上の方が手術を受けられており、全員大きな合併症なく退院されています。外科領域では、宮崎大学呼吸器外科が宮崎県において最も早くロボット支援下手術の導入を行いました。
完全鏡視下で行う標準的な手術(縦隔リンパ節郭清を伴う肺葉切除、肺区域切除)の平均手術時間は1時間40分前後、術後入院期間は平均3日前後となっております。術後の経過が特に問題なければ、手術当日にすべての管が抜け食事が開始されます。遅くとも翌日朝には離床(病棟内を歩行)を行います。
癌の種類や患者さんの状態によっては、肺の切除範囲をせまくした肺部分切除を行うこともあります。この場合は、胸に小さな穴を1-2か所あけて胸腔鏡を用いて手術が行われます。手術時間は15分~1時間ほどで、術後に胸に入る管(胸腔ドレーン)は手術室で抜いて病棟に帰ります。術当日に離床を行い、術翌日に退院することが多くなっています。
また、他臓器合併切除を要する進行肺癌の方には、開胸手術(前方腋窩開胸 皮膚切開8~12cm, 後側方開胸 皮膚切開12~16cm)で行うこともあります。2023年は肺癌で手術を受けられた患者さん140人中7人の方が開胸手術を受けられました。
転移性肺腫瘍
肺は悪性腫瘍が転移しやすい臓器の一つであり、各臓器に発生したがんが、血流を介して肺に転移したものを転移性肺腫瘍(転移性肺癌)と呼びます。転移性肺腫瘍に対する治療は原発巣(最初にがんが発生した臓器)の特徴により様々ですが、外科的切除も一つの選択肢となっております。手術は主に肺転移巣を周囲肺組織とともに楔状に切除する肺部分切除術が胸腔鏡を用いて行われます。手術時間は15分~40分程で術後1〜2日前後の入院期間を要します。
縦隔腫瘍
縦隔とは心臓や気管、食道、血管のある胸部の中心部分を指し、ここに発生した腫瘍を縦隔腫瘍といいます。胸腺腫・胸腺嚢胞・胸腺癌、奇形腫などがあります。通常、みぞおちや胸に小さな穴を2か所あけて胸腔鏡を用いて胸腺摘出術が行われます。手術時間は1~2時間、術後の平均入院期間は2日程度となっております。大血管に腫瘍が浸潤している場合は、胸骨正中切開(胸のちょうど真ん中、左右の乳首の間の体の中央線上で縦に1本の正中切開と呼ばれる皮膚切開)を行い、大血管合併切除、再建術が行われることもあります。